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①遺産分割前の預貯金債権の払戻請求ができるようになりました。(民法第909条の2)
相続発生後の当面の必要生活費、平均的な葬式の費用の支払いができるように、一定の金額までは、各相続人が単独で預貯金を払い戻せるようになっています。
一定の金額とは、一つの金融機関ごとに法定相続分の3分の1以内、かつ150万円以内です。
例えば、ある金融機関の口座の預金が1800万円で妻と子が2人の場合は、妻は法定相続分2分の1の3分の1である300万円が150万円を超えますので150万円を、子は法定相続分4分の1の3分の1である150万円をそれぞれ単独で払い戻すことができます。
なお、それぞれが払い戻した分は、一部分割で取得したものとみなされます。
複数の金融機関に預貯金がある場合には,それぞれの金融機関から上限額まで払戻しを受けられます。
②遺産の一部の分割が可能であることが明文化されました。(第907条)
いままで遺産の一部の分割は実務的に行われていましたが、可能であることが明文化されました。
遺産の分割について、共同相続人間で協議がまとまらない場合、家庭裁判所に対しても一部の分割請求をすることができます。
ただし、遺産の一部を分割することにより他の相続人の利益を害するおそれがある場合はできません。
③結婚して20年以上の夫婦の場合、配偶者への居住用不動産の遺贈又は贈与が特別受益の対象外となりました。(第903条)
つまり、結婚して20年以上の夫婦間で自宅を配偶者に遺贈又は贈与した場合でも、配偶者の遺産取得分が減らされることはありません。
「居住の用に供する」という要件は、遺言書作成時又は贈与時に満たしていればよいとされています。