相続人は、被相続人の一切の権利義務を引き継ぎます。
したがって、マイナスの財産も含め、ほとんどすべての財産が相続人に相続されることになりますが、中には、相続されない権利があります。
その権利は一身専属権といわれ、その人にしか持ちえない権利のことです。
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一身専属権には、たとえば次のようなものがあります。
1.代理人の地位
あくまでその人だからこそ代理人に選任したのであって、その人が亡くなった場合に相続人が代理人の地位を相続するということはありません。
2.雇用契約の被用者の地位
あくまでその人だからこそ被用者として採用したのであって、その人が亡くなった場合に相続人が被用者の地位を相続するということはありません。
3.使用貸借契約における借主の地位
使用貸借とは、たとえば家を、無料で、ある人に貸すというような行為で、あくまでその人だからこそ無料で貸したのであって、その人が亡くなった場合に、相続人がそのままその家を無料で使えるということにはなりません。
ほかにも相続財産とならないものがあります。
1.お墓、墓地、仏壇、仏具
お墓や墓地の権利、祭祀品などは、相続財産とはならず、その地域の慣習に従って、あとを継ぐ方が決まります。
2.生命保険金
生命保険金は、原則として相続財産ではなく、受取人の固有の財産です。たとえ相続人が生命保険金の受取人であったとしても、それは相続人であることとは関係なく、あくまで保険契約に基づく受取人として受け取ることになります。
ですが、解約返戻金がある生命保険で、被相続人が契約者であり、受取人も被相続人(契約者=被保険者=受取人=被相続人)の場合は、相続財産になります。
3.死亡退職金
死亡退職金とは、在職中の従業員が不慮の病気や事故により亡くなられた場合、本来亡くなられた方が受け取るはずだった退職金を、遺族が受け取ることができる退職金制度です。
死亡退職金は、その規定がある企業でのみ給付されることが一般的です。
死亡退職金の受取人は、その会社の就業規則や退職金規定に定められています。しかし、受取人が明記されていない場合は、相続財産となります。
なお、生命保険金や死亡退職金は、原則として相続財産にならないものの、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。
ただし、ある一定の金額(500万円×法定相続人の数)については非課税にすることが認められています。