遺言書の種類はたくさんありますが、代表的であるのは次の2種類です。
このページの目次
1.自筆証書遺言
一般的に遺言といえば、この自筆証書遺言のイメージかと思います。
自筆証書遺言の要件は、たくさんあるように勘違いしますが、実は次の要件のみです。
・全文、日付、氏名を自書(自分で手書き)し、押印する。
封がされていなくても構いませんし、押印は認め印でも大丈夫です。
(ただし、偽造防止の観点から、封をしておく方がよいですし、ご本人が作成していることの証明のため、実印を押印する方がよいと思います。)
ですが、この要件は必ず守らないと無効になる可能性が高いところに、自筆証書遺言の怖さがあります。
たとえば、日付を「〇月吉日」とした遺言を無効にした判例があります(ただし、遺言の内容から日付が特定できるのであれば、有効とされる可能性もあります)。
なお、全文を自書するという要件は、すべてを自書することが大変であったことから少し緩和され、2019年1月から、別紙で財産目録をつけるときは、その目録についてはパソコンなどで作成できるようになりました(本文は自書が必須です)。
銀行通帳のコピー、登記簿謄本なども目録として認められます。
ただし、偽造防止のため、目録のすべてのページにも署名押印することが必要ですし、両面に記載がある場合は、両面に署名押印することが必要です。(改正民法968条2項)
遺言書の記載方法について
遺言書におきましては、死後に争いが生じないよう、正確に財産及び分け方を記載する必要があります。
悪い例1 「妻に自宅を相続させる」
自宅とは、具体的にどの不動産を指すのか、明確ではありません。
このような場合は、次のように記載します。
「妻甲野花子に、次の不動産を相続させる。
土地
所 在 大阪市中央区谷町一丁目
地 番 1番〇
地 目 宅地
地 積 120.12㎡
建物
所 在 大阪市中央区谷町一丁目1番地〇
家屋番号 1番〇
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 55.55㎡ 2階 55.55㎡」
登記簿謄本の記載を確認して、記載する必要があります。
悪い例2 「A銀行の預金合計2000万円のうち1000万円を長男に相続させ、残りを二男に相続させる」
A銀行のどの支店のどの口座の1000万円なのかがわかりませんので、実際に相続手続を行う際に困ります。
また、亡くなった際にA銀行の預金残高が1500万円に減っていたような場合、A銀行の預金を長男と二男でどのように分けるかで争いが生じる可能性があります(2000万円を半分ずつで長男二男が分ける趣旨だったのか、長男に1000万円を必ず相続させる趣旨だったのかがわかりにくい)。
このような場合は、次のように記載します。
「長男甲野一郎に、下記預金を相続させる。
A銀行 大阪支店 普通預金 口座番号 1112222
二男甲野次郎に、下記預金を相続させる。
A銀行 西宮支店 普通預金 口座番号 2223333」
預金通帳の記載を確認して、記載する必要があります。あとは、預金通帳をあまり動かさないようにする必要があります。
万一財産に漏れがあったときに備え、次のような一文を入れておくのがよいかと思います。
「その他遺言者に属する一切の財産を、長男甲野一郎に相続させる。」
遺言書を作成された後
遺言書を作成された後は、定期的に財産を確認し、財産に大きな変動があった場合は、遺言書を書きかえることを検討される方がよいと思います。
また、遺言書を作成されたことを、どなたか信頼できる方や、一番財産を取得される方に伝えておく方がよいと思います。遺言書があることに気付かれずに、相続手続が進められてしまう可能性があります。
なお、亡くなられた方の自筆証書遺言を発見された場合、封がされている場合は開封せず、家庭裁判所にて検認手続を行う必要があることに、ご注意ください。
当事務所では、自筆証書遺言の作成をすべてサポートし、ご希望により遺言執行者となり、最後まで責任をもって、ご意思のとおりに遺言執行を行います。
どうぞ当事務所をご利用ください。
2.公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言者が必要書類を集め、内容を公証人に伝えることにより、公証人が作成します。
遺言書の文章は、公証人が作成してくれます。
必要書類は、およそ次のとおりです。
- 遺言者の戸籍謄本、印鑑証明書
- 財産をもらう人が相続人の場合、関係のわかる戸籍謄本
- 財産をもらう人が相続人ではない場合、住民票
- 不動産がある場合、固定資産税評価証明書又は納税通知書、登記事項証明書(登記簿謄本)
- 預貯金、有価証券等の内容を記載したもの、通帳、証券などのコピー
公証人と数回打ち合わせをし、遺言書案が完成すれば、公証役場に行くか、公証人に出張してもらい、公証人が遺言書案を読み上げるのを聞き、内容に間違いがなければ署名して、遺言書が完成します。
また、その際、証人が2人必要ですが、未成年者、推定相続人、受遺者、それらの配偶者と直系血族等は、証人にはなれません。(民法974条)
公正証書遺言の作成は、公証人の報酬が別途かかりますが(遺産総額、内容により異なりますが、8万円ほど)、非常に証拠力が強く、検認手続も不要です。
遺言を作成される場合は、公正証書遺言になさることをおすすめいたします。
当事務所では、公正証書遺言作成のための書類収集、公証人との打ち合わせを代行し、公証役場に立ち会った上、完成まですべてサポートいたします。